2010年の業界動向を予測と振り返る

2010年も終わりに近づきましたね。 最近、アメリカを視察する企業が徐々に増えているようですが、円高だということもその後押しをしているのでしょう。
さて、F&Rアソシエイツでは、2010年にアメリカのレストラン業界で話題となるであろう事柄を今年最初のブログ(1月8日付)で発表しました。 一年が経って、アメリカのレストラン業界がどのように動いたか、主な項目に関してお伝えします。

● グルメバーガーチェーンの躍進
● 地中海料理コンセプトのブーム
● カジュアルレストランの生き残り戦略
● ケータリング事業のボリューム拡大
● iPhoneなどのアプリケーション利用企業の増加
● twitterを使ったトラック販売ビジネスの躍進
● 店内のデジタル表示の増加
● メニューのカロリー表示が各地で法制化
● FDAフードコードで食品取り扱いの安全基準強化

グルメバーガーチェーンの躍進
ここでは、グルメバーガーと表現していますが、アメリカではベターバーガーと表現されることが多く、各地で新しいバーガーコンセプトがタケノコのように育ってきています。 2009年に最もFC契約を進めたのが『ファイブガイズ』(約600店舗)ですが、今年にその勢いはないようです。 代わって今年は『スマッシュバーガー』(約80店舗)がFCの店舗数を伸ばしました。 この2つのコンセプトを比較すると、よりシステマティックにコンセプトを作り上げているのは『スマッシュバーガー』で総合的なまとまりがありチェーン化に向いています。 韓国では、このコンセプトに目を付けた企業が早くもFC契約を済ませています。 『ファイブガイズ』は個人営業者に向いているレストランです。 『ファイブガイズ』は、バーガー大国である南カリフォルニアや大都市圏マーケットに参入して生き残るだけの魅力を感じません。 アメリカは広いのでこのコンセプトのニーズは存在します。 『ファイブガイズ』と同じパターンでビジネスをスタートしたのが、2008年にダラスで創業した『ムーヤーバーガー』(15店舗)です。 2店舗オープンしたところでチェーン化を見据えコンセプトを作り変えてきていますので、南部で徐々に広がってくるはずです。 南部には、他にアトランタを中心にオーガニックビーフを使ってバーガーを提供する『エレベーションバーガー』(10店舗)が展開をしています。 こちらはニューヨークなどにもFC展開を行っており、高学歴の消費者を狙ってのビジネスですから大都市に店舗展開をしています。 同じように高学歴の消費者を対象にして着実に伸びているのが、南カリフォルニアの『ザ・カウンター』(26店舗)です。 来店客が、食べたいハンバーガーを自分で組み立ててオーダーをするという、アメリカ人の好む「自分のための食事」を提供してくれる場所としての存在感があります。 

地中海料理コンセプトのブーム
地中海コンセプトは予想以上に伸び悩みました。 ガックリとしたのは、そのリード役だったギリシャ料理のチェーン店舗『ダフィニーズ』が1月に倒産してしまったことです。 その後買収され、創業20周年に当たる2011年に再起をかけての展開を行うようです。 どのように立て直すかが見ものです。 地中海料理コンセプトで少し輝いたのは、デンバーにある『ガバンゾーメディタレニアングリル』(12店舗)でしょうか。

カジュアルレストランの生き残り戦略
カジュアルレストランは直営店舗数をフランチャイジーに売却をし、FC運営比率を上げています。 『アップルビーズ』の親会社ダイン・イクイティ社は、今年だけで120店舗近くの直営店を売却しています。 『チリズ』は、集客力に貢献してきた「お二人様で20ドル」という「2 for $20」プロモーションを頻繁に実施し、ついに期間限定から通年のプロモーションへと変更する方向で計画中です。 今年、生き残れなかったのが南カリフォルニアのカジュアルレストラン『クレイムジャンパー』で、倒産後ランドリーレストランツ社に買収されてしまいました。

twitterを使ったトラック販売ビジネスの躍進
フードトラックは以前から存在していましたが、フードトラックのレストランビジネスコンセプトは、南カリフォルニアの『コギ・コリアンBBQ』がTwitterで直接消費者に語りかけるソーシャルメディアマーケティングを利用してビジネスを行ったことが人気となり、今年急速に全米都市へと広がって行きました。 レストランでもフードトラックを持ちビジネスをするところも出ています。 フードトラックが増えれば増えるほど規制の強化が始まり、ロサンゼルスではレストランと同様に保健所の検査結果を評価文字で表示することが義務付けられ、シカゴでも同じ移動ルートでビジネスをすることなど数々の規制が設けられてきています。 

メニューのカロリー表示が各地で法制化
今年2010年3月に連邦議会を通過した医療改革法と共にメニューへのカロリー表示も法制化され、全米で2011年の3月から実施することでFDA(食品医薬品局)はガイドラインを出しています。 20店舗以上を展開する企業の各レストランでは、メニューアイテムににカロリー、飽和脂肪、コレステロール、塩分、糖分、炭水化物、他の表示が義務付けられます。 これは、お客様が求められれば速やかに提示できるようにしなければなりません。

加えて食品の安全性についても2010年12月に改正法が成立しました。FDAに食品のリコール権限を与えたり企業の内部告発者を保護するなど、相次ぐ食中毒を食い止めようとする法律改正はオバマ大統領が積極的に進めていました。
2011年のアメリカレストラン業界については、次回に書かせていただきます。

2011年も皆様にとって良いお年でありますよう、お祈りいたします。