アジアンコンセプト

チポトレ社(本社:デンバー、コロラド州)が、ファストカジュアルのアジアンコンセプトショップハウス・サウスイースト・アジアンキッチン(以下ショップハウス)をワシントンDCにオープンさせて大よそ2年が経ちました。 今年6月17日にチポトレは、その2号店を南カリフォルニアのハリウッドに出店しました。 

ワシントンDCに出店をする際、チポトレ社は、チポトレ同様、地元食材を使い、味覚にインパクトを持たせよりヘルシーな料理が提供できるアジアンコンセプト、ショップハウス、を創り上げ、実験的にオープンしたようです。 チポトレのブランドは一切出さずに出店をし、スティーブ・エルス氏(チポトレ社CEO)は、出店当時、2号店目を考えていないと話しています。 半年ほど後に、ワシントンDCに近いジョージタウンに2号店を出店することを発表していますが1年経っても動きはありませんでした。 コンセプト見極めと方針に時間を掛けていたとも取れます。 パリウッドの次にジョージタウンを開くでしょうが、サンタモニカなどマーケットに力がある南カリフォルニアに焦点を当てて出店をしてくるでしょう。 南カリフォルニアで実績ができれば、他州への展開へと拡大されていくのだろうと考えます。 

左:Shophouse Southeast Asian Kitchen店内 右:紙製の器で提供される ビビンバ
左:Shophouse Southeast Asian Kitchen店内 右:紙製の器で提供される ビビンバ

市場のニーズの潮流は、「健康的」イメージを持つレストランを求め、味覚に「インパクト」のある商品そして食後話題にできる未知の商品を求めています。 その答えの中心にアジア料理の存在があります。 ここ数年でシラチャーソースやキムチなどの知名度が上がり全米に広がっています。 南カリフォルニアのアジア系アメリカ住民の人口は増え、アジア系レストランは多く存在しています。 その中で存在感をアピールできれば、拡大への足掛かりとなります。 

1993年にコンセプトメーカのポール・フレミング氏とリック・フェデリコ氏が、アメリカンチャイニーズレストランとして創業したP.F.チャン チャイナビストロが、その時代の市場ニーズの潮流に乗りブランド確立に成功したように、市場を見極めたコンセプトを考える必要があります。 フレミング氏は、その10年後にアウトバックステーキと共にチャイニーズカジュアルコンセプトを創り上げ展開を試みましたが、既に、市場のニーズは彼のコンセプトに興味を示さず失敗しました。 
チェーン企業が試みたアジアンコンセプトで記憶に残るものには、次のものがあります。
・2002年にヤム!ブランズ社(本社:ルイビル、ケンタッキー州)が香港のフェーバリットレストラン社とのJVでTVシェフ、マイケル・ヤン氏を巻き込んだファストカジュアル・チャイニーズ、ヤンキャンを実験
・2004年にアウトバックステーキ社(本社:タンパ、フロリダ州)のカジュアルレストラン、ポールリーズ チャイニーズキッチンを実験
・2006年にP.F.チャン チャイナビストロ社(本社:スカッツデール・アリゾナ州)の居酒屋コンセプト、タネコを1店舗だけ実験
いずれも2年から3年ほどでコンセプトを終えてしまいました。
そして、2012年5月に吉野家USA社(本社:トーランス、カリフォルニア州)が、吉野家2店舗をリモデルしてファストカジュアルのアジアンコンセプト、アシアナグリル Yoshinoyaとして出店しましたが、既に1号店を閉店しています。 どちらも大学街にある吉野家でしたが、開発不十分なアジアナグリルコンセプトへの転換は市場ニーズとの不一致、店名の最後にYoshinoyaを付けたことによる店舗イメージへの混乱が、この結果を招いています。 
これらのコンセプトには企業側の考えが強く出すぎていたように感じます。 コンセプトと市場ニーズとの間にギャップが生まれたのも、その修正ができなかったためだろうと思います。
左:ヤンキャン(2003年当時) 右:アシアナグリルYoshinoya
左:ヤンキャン(2003年当時) 右:アシアナグリルYoshinoya

アジアンコンセプトの中では、パンダエクスプレス(本社:ローズミード、カリフォルニア州)が約1600店舗の規模に成長し、最も多くのマーケットに受け入れられています。 パンダエクスプレスには、広い市場に対応するカフェテリア方式を取り、来店客が提供商品を事前に確認ができサンプルの味見ができるなどブランドを作り上げる数々の要素が見て取れます。 
パンダエクスプレス
パンダエクスプレス
foodrestcom@gmail.com